Daily Archive: 2015年9月18日

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『入力』より『出力』

米パデュー大学のカーピック博士は、ワシントン大学の学生を4つのグループに分け、40のスワヒリ語を記憶してもらう実験を行いました。1番目のグループはテストして、間違えたらリストを見せ、全部を再テストします。2番目は間違えた単語だけ見せ、全部を再テスト。3番目は間違えたらリストを見せ、間違えた単語だけ再テスト。最後は間違えた単語だけ見せ、間違えた単語だけ再テストします。全問正解するまでその日のうちに何度も再テストをしたところ、覚えるまでのテスト回数には差がありませんでした。

ところが1週間後に再テストをすると、グループ間で大きな差が出ました。3、4番目のグループより、1、2番目のグループの点数が3倍ほど高いという結果が出たのです。得点の高いグループに共通するのは、再テストで毎回全問を解いたかどうか。つまり入力の仕方は関係なく、出力する機会が多いほうが記憶は定着すると考えられます。

「学習」は脳への入力です。「テスト」は脳からの出力です。つまり、脳の機能は「出力」を基準にして、そのパフォーマンスが変化するのです。脳にはいろいろな情報が入ってきます。しかし、そのすべてを覚えておくことはできません。当然、取捨選択しなくてはいけないわけですが、このとき、入力の回数だけでなく出力の回数(使用頻度)でも判断しています。むしろ、脳は出力のほうにより依存している。ですから、教科書や参考書よりも問題集を何度も解く復習のほうが効率的だ、といえます。

 

これは東京大学・大学院薬学系研究科教授 池谷 裕二(いけがや ゆうじ )先生のお考えです。神経科学および薬理学を専門とし、海馬や大脳皮質の可塑性を研究されており、脳科学の知見を紹介する一般向けの著作も書かれています。

この池谷先生が、10月2日、津山高校120周年記念式で講演をされます。楽しみです。

 

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